中小企業の原価管理の進め方

原価管理

こんにちは、合同会社フォーサイトデザイン 中小企業診断士の長谷川です。

前回のコラムでは、中小企業の原価計算について書きました。
今回は、中小企業で利益を出すためにはどうしたらよいのかについて、原価管理の視点で紹介します。

第1ステップ 中小企業の原価管理

「忙しいのに利益が出ない」
「もうかっていると思っていたのにもうかっていなかった」
「売価交渉したいが、売価アップの根拠となる交渉材料がない」
という会社は、しっかりした原価計算ができていないことが多いと思われます。

利益の出ていない会社の特徴

見積時の原価計算を簡易的にやっている

 材料費と工数だけで売価を計算している

今までの経験で、加工費を工数×単価で計算しており単価(賃率)が経費と一般管理費を加えた単価で設定している場合があります。

この単価設定が昔から変わっていない、もしくは発注者からの指定単価で計算していることもあります。

この原価計算方法だと、利益の取れない売価設定になることがあります。

実際の材料費や工数、経費がどうだったのかの計算をしていない

実際に生産にかかった時間や経費を記録したりして実際原価の計算をしていないので、どうすれば原価低減ができるかがわかりません。

取引先毎の売上、粗利がどうなっているのか見ていない

どの取引先が利益が出ているのか、どの受注が赤字の案件なのか把握できていない

このような会社は、一生懸命仕事をやっているので、忙しいのですが、資金繰りが厳しく、決算書で赤字になっているのがはじめてわかるという場合が多いです。

原価管理の進め方

こういった会社の場合には、まず手始めとして次のことを始めてはどうでしょうか。

1.まずは見積もりベースで構わないので、粗利管理を行う

2.取引先別、受注案件別の粗利管理を行う

3.社内加工費(社内賃率)、販管費を把握する

取引先別、受注別の利益把握

これにより取引先別、受注別の採算がわかるようになります。
受注額も大きく、売上も大きく大切な取引先だと思っていた会社が実は粗利額が少なく、会社の赤字の原因になっていたということもあり得ます。

逆に、新規受注でまだ受注額も少ないが、十分な利益が得られている取引先があったりした場合には、もっと真剣に新規取引先との関係性を深める必要があるかも知れません。

実は中小企業の経営改善で一番効果のあるのが取引先別採算の把握と赤字受注の取り止めです。取引先別採算の把握のためには、まずは取引先別、受注案件別の粗利管理が必要です。

社内加工費(社内賃率)、販売管理費の把握

社内加工費(社内賃率)の把握をしていない会社も多いと思います。

(年間社内労務費+年間製造経費)を年間総労働時間で割れば社内加工費(賃率)が求められますが、昔からの経験値で時間賃率5000円とか変えない会社も多いです。

事務員の労務費、製造に携わらない役員報酬や事務所家賃などの一般経費は決算書上は原価ではなく販売管理費に計上しますが、この製造原価の他に必要な販売管理費が売上の何%を占めているのか把握していない会社も多いと思います。売価設定の際には製造原価に販売管理費、利益を加えて設定する必要があります。

第1ステップでは、まだできないこと

粗利管理の第1ステップではまだ原価管理とは言えません。

この段階では、実際に掛かった製造費用を元にした実際の原価がわかりません。

また、実際原価がわからないとどうすれば原価低減ができるのかといった原価低減活動ができません。

筆者紹介
合同会社フォーサイトデザイン  中小企業診断士 長谷川綱雄
認定経営革新等支援機関
公的支援機関で、事業承継支援、事業再生・経営改善支援、新規事業開発、事業計画策定支援などの中小企業支援を中心に活動
 原価管理、IT活用、補助金申請、中期事業計画、人材育成なども得意分野

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