食料品の消費税がゼロになると、飲食店の経営は厳しくなる?

中小企業支援

 最近、食料品の消費税減税を求める動きが活発になっています。参議院選挙に向けた各政党の政策案と見ることもできますが、最近の物価上昇に賃金値上げが追い付いていないことから、低所得者層の生活を守ることが大きな目的であることは間違いないと思われます。

 しかし、軽減税率やインボイスの導入などで消費税の仕組みが複雑になってきたことにより、食料品だけの消費税減税ではいろいろなひずみが生じることになりそうです。

 消費税減税には賛成だが、食料品の消費税をゼロにすると飲食店の経営に大きな打撃を与えると警鐘を鳴らす意見が見られます。

 Noteブログに、食料品の消費税をゼロにした場合の、飲食店の経営にどんな影響があるのかについて記事を書きました。


ここでの概要は以下のようになります。

食料品の消費税がゼロになると飲食店がつぶれるという意見の根拠

 食料品の消費税がゼロになると、食材費の消費税の仕入控除ができなくなるため、消費税負担が増え、増税となり飲食店の経営が厳しくなるというのがその根拠です。

 しかし、消費税の負担は増えますが、食材費の仕入額が消費税分だけ下がるため、飲食店の損益は変わらないということが言えます。

 飲食店の経営が厳しくなると言っている人の意見は、食材費が消費税分だけ下がることはなく、食材費の仕入額は変わらないため、消費税負担増分だけ飲食店の経営が厳しくなるとの意見です。

食材は消費税分だけ価格が安くなるのか

 食料品の消費税がゼロになっても、食材販売業者が消費税分だけ価格を下げる保証はなく、飲食店の食材仕入が下がらないという意見も、そういったリスクがあるという点で、納得できる部分もあります。
しかし、私は市場原理から概ね下がっていくものだと考えています。

飲食店の経営で気を付けること

 飲食店も食材を仕入れるときには、消費税分だけ安く仕入れる必要があります。今までよりも消費税納税が増えることを計算に入れて経営をすることが重要だと思います。

簡易課税選択の場合

 簡易課税を選択している事業者は、食料品の消費税がゼロになっても、消費税負担は変わらないので、食材費が安くなる分だけ利益は増えます。

まとめ

◆食料品の消費税がゼロになると、一般消費者の出費は確実に減るため、減税の恩恵は大きいが景気浮揚策にはならないと思われる。

◆しかし、消費税の仕組みが複雑になり、飲食店や食材販売業者などへの影響があるため、政策を実現するのであれば、恒久的な制度とするべき。

◆そもそも減税をするのであれば、食料品のみとか、所得制限をつけるとかではなく、時限的にでも消費税率を一律に下げることが、国民生活への後押しと経済活性化につながるものと考えます。

 食料品の消費税を下げるという政策は、税収への影響が少なく、低所得者層への減税の恩恵が大きいため良い政策のように受け入れられるかもしれません。しかし、消費税の仕組みがますます複雑になり、飲食店などへのひずみもリスクとして考えられるため、手放しで賛成する訳ではありません。

次の段階では、食料品の減税分を補うために、他の消費税率を上げるなどといったことにも成り兼ねません。

 期限付きでもいいので、単純にすべての消費税を一律さげることで、国民の生活を守り、経済の活性化につながるようにしてもらいたいものです。

筆者紹介
合同会社フォーサイトデザイン  中小企業診断士 長谷川綱雄
認定経営革新等支援機関
公的支援機関で、事業承継支援、事業再生・経営改善支援、新規事業開発、事業計画策定支援などの中小企業支援を中心に活動
 原価管理、IT活用、補助金申請、中期事業計画、人材育成なども得意分野

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