こんにちは、中小企業診断士の長谷川綱雄です。
新型コロナウイルス感染症の影響への対応として雇用調整助成金の特例が拡充されています。
雇用調整助成金とは
新型コロナの影響で休業を余儀なくされた場合でも、企業は従業員に賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
企業が従業員を解雇せずに雇用を維持することができるように、企業の支払った休業手当の一部を助成するのが雇用調整助成金です。
従来の雇用調整助成金の課題
1.申請書類が多く、書類が揃わないと受け付けてくれない
2.助成金支給までの期間が長く、資金繰りが苦しい
3.助成金の額が休業手当の全額ではない
4.休業計画届が事前申請
5.雇用保険保険者だけが対象
6.不正受給が多かった
緊急対応期間(4月1日~6月30日)の特例拡充
これらの課題に対して緊急対応期間の特例拡充では以下のような対応がされています。
1.助成率の拡充
中小企業は 2/3 → 4/5 解雇等をしていない場合 9/10
2.休業計画届が事後提出でよくなった
事前提出の必要だった休業計画提出が、6月30日までは事後提出でよくなりました。
3.雇用保険被保険者でない者にも適用
週20時間未満の労働者(パート、アルバイト)の休業にも適用
他にも特例の拡充として
4.生産指標の緩和と雇用状況の条件緩和
生産指標が前年同月比10%の減少という要件を5%減少に緩和
雇用量が対前年比で増加していても助成対象
5.支給限度日数
緊急対応期間は、1年間100日の支給限度日数とは別枠
6.事業設置後1年以上の要件緩和
7.休業規模の要件緩和
休業延べ日数 1/20を1/40に緩和
8.短時間休業要件を緩和
9.残業相殺制度を当面停止
10.教育訓練実施の加算額引き上げ
などの条件緩和がされています。
申請書類の簡素化
雇用調整助成金の一番の課題が申請書類が多く、事業者自らでは申請できないということでした。
これは、今まで不正受給が横行していたため、厳しく審査を行う必要があったため、逆に使いにくくなってしまっていたということになります。
今回の緊急事態では、今までと同じ審査方法では、誰も助成金を活用できなくなることから、今回申請書類を大幅に簡素化しています。
必要書類の簡素化内容を見てみると、確かにこれ以上減らせないというところまで、簡素化されています。
計画届は事後提出が可能で、計画を立てて休業協定書を結べば、それほど多くの書類はいりません。
支給申請が大変ですが、自動計算機能付きの様式にしたり、実績報告の書類なども極力簡素化されています。
しかし小規模事業者などは就業規則や給与規定のないところも多く、どこまでの書類で申請を通してくれるのかが不明です。
何らかの救済措置を考えてほしいものです。
更なる拡充(5月上旬に詳細発表)
4月25日には雇用調整助成金の更なる拡充が発表されました。
1.休業手当の支払い率60%超の部分の助成率を特例的に10/10とする
例えば会社が100%の休業手当を出した場合には現行では、9/10の負担なので10%の企業負担率になりますが、これを適用すると会社の負担は6%に軽減します。
2.一定の条件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に10/10とする
・休業要請を受けた中小企業が解雇を行わず、100%の休業手当を支払っている場合
又は、上限額8330円以上の休業手当を支払っている場合
◆対象労働者1人1日当たり8330円上限が天井
いくら助成率を9/10にしようと、10/10にしようと8330円の上限があると、経営者にとっては、あまり変わらないかもしれません。
1日8330円というのは、東京都の最低賃金で8時間労働とほぼ同じ額ですから、この上限額を引き上げることがないと、助成率がいくら上がっても意味がないと思われます。
まとめ
いろいろと小出しにしてきた雇用調整助成金の特例ですが、一番評価できるのは申請書類の簡素化です。これならば事業者でも申請ができそうな内容です。
しかし助成金の相談には3,4時間の待ちになっていたりして、なかなか相談に乗ってくれなかったりしているようで、申請も極力郵送で行ってほしいとのことですので、申請書類の不備などで、再度一からやり直しになったりしないように、丁寧に対応してほしいものです。
良くなった点(4月1日~6月30日までの緊急対抗期間)
1.助成率の拡充
2.申請書類の簡素化
3.パート・アルバイトも対象
などですが、今回の新型コロナ対応では休業を要請されている事業所も多いため、助成金の上限額(1日8330円)を引き上げて欲しいものです。